さて、話は取次の謎が解けるその前にさかのぼるが、

父の本が仮にAmazonに登録されたとしても、
それだけでバンバン注文が来て、飛ぶように売れる、などとは、
いくら頭がピヨピヨにおめでたい私でも思ってはいなかった。

なにかしら、父の本やその内容や父の名前に興味を持って、
検索をかけてもらわないことには、注文画面には行き着かないのだ。

まず考えたのは、帯を変えることだった。

まだこのころは、普通の書店の棚に置いてもらうことも妄想していたので、
帯に派手なアオリ文句を入れることで、
ある程度の注目を集めることもできるのではないかと考えた。
まあそれよりなにより、以前に作った帯が、
私は気に入らなかったってのが、一番の理由なんですけどね。

今、本にかかっている帯には父の考えた文言が印刷されている。

「えしぇこぎ、ぶしゃれこぎのもんじゃくたねえこと」

………まるで呪文。

山形県庄内地方の方言なのだが、
出身者の私でも、その意味を正確に説明することはできないし、
だいたい日常生活では、地元の人間ももはや使わない言葉の羅列である。

かっこつけの父は、この、今では年配の人でもよく分からない方言を
帯につけることで、奇をてらったつもりらしいが、

帯で奇をてらってどうする。

帯は本を売れるようにするためにつけるものだ。

しかも色も地味なモスグリーン。
カバーの色と合わせて洒落たつもりらしいが、目立たない。

まず色を金赤(真っ赤)にして、
表1側(表紙側)に入れる文句を眼を引くものに代えよう。

なにで眼を引くかと考えて、思いついたのが「藤沢周平」である。

鶴岡出身の藤沢周平氏の小説があいついで映画化され、ロケ地にもなり、
今、鶴岡は空前の藤沢周平景気だ。

いや、景気がいいかどうかは知らないが、
とにかく、全国的に知名度の高い藤沢周平と、
その映画の人気にあやかろうと、
市を挙げての一大キャンペーン中のようだ。

JR東日本も、旅行会社も、
藤沢作品中に出てくる架空の藩「海坂藩」に行こう!と
鶴岡のことを宣伝している。
各大手出版社からも、藤沢周平がらみで鶴岡の紹介本が
続々と出版されている。

で、「藤沢周平」「海坂藩」は全国で通用する宣伝文句になるぞと
私は、それにちなんだ宣伝文句をひねり出した。

「あの藤沢周平の海坂藩のモデルになった鶴岡市……云々」

ってな感じ。
「藤沢周平」「海坂藩」という文字は大きく目立つようにデザインだ。
ううーーん…… 
かなり苦しいが、市販の本だって似たようなことやってんじゃんっ
と開き直って、それで行くことにした。

念のため、出版社に勤める友人に、
こういう宣伝用に誰かの名前を使う場合、
どこかに許可がいるのかと聞いたが、
「ウソさえ書いてなければ、いんじゃない?」とのことだった。
(ほんとかっ!?)

「藤沢周平」の名前に反応して手にとってしまった人は
中身を読んで「騙された」と思うかもしれないが、
ちゃんと読めば、ウソなどどこにも書いていない。
うう… 三流広告の常套手段だ。
なんとなく忸怩たる思いもあるが、いいとしよう~

宣伝文句が決まった私は、30分たらずで印刷用のデータを作った。
こういうことに関してはプロなので、すぐできる。くふふ

ISBNの番号を取得してバーコードができたら、
それと一緒に知り合いの印刷屋さんに、帯の印刷も頼もう。

しかし、いくら帯を効果的な宣伝文句に代えたところで、
家に積んで置いては、なんの役にも立たない。

「藤沢周平」がらみで、なにかできないかと、
なおも考える私であった。


つづく
関連記事
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック