さまざまな手配は一段落して、本を売るための手段は整った。

さて、ではどうやったら売れるのか。
どうやったら、見ず知らずの人たちが買ってくれるのか。


さらに、妄想(暴走)を始めたマイ出版社「稀人舎」が成功するためには
どうしたらいいのか。

少し落ち着いて考える余裕ができた。

今売ろうと思っている父の本「飲んだくれてふる里」という本は、
父が自分の生きているうちで作る最後の本だ、と言っていた。
そのせいだと思うが、内容がなんとも詰め込みすぎな感じで、
とりとめがない。

「もうこれで最後なのだから、悔いのないように」という
父の気持ちは分からないでもないが、
全体を通して、いったいなんのことが書いてある本なのか
よく分からないのだ。
ただのエッセイ集とはいえ、テーマが絞られていない本は、
読んでいてつらいものがある。

これが、有名人のエッセイ集ならば、
読者はその有名人の日々考えていることを知るだけで満足なのだから、
テーマなどなくとも、その人が書きたいことをただ書いても
それだけで、本を読むファンはおもしろがってくれる。
でも、売れる本は、なにかしらテーマがあるよね。
有名人のエッセイ集でもさ。

でもって、
父は、ど田舎のただのしょぼくれたじじいである。
こんなじじいが何を考えているのかなんて、
誰も知りたくもないし、知ったところでおもしろくもないのだ。

その点、以前に出して1000部完売した「ふる里つるおか味ばなし」
テーマが「鶴岡の食べ物」に絞ってあったので、
誰にでも読みやすかったのだと思う。

「味ばなし」の方は、1000部完売したのち、
発行から10年がたとうとしている今になっても
在庫はないのかと、たまに問い合わせがあるそうだ。

ふーむ……
この「味ばなし」を軽装版にして再版したらどうか。

ふとした思い付きだったが、かなりいいセン行ってるような気がした。

父は、自分の本の最後に、よその本などからちょっとした
小話や格言のような文を引用するのが好きだ。
自分の読書量を知らしめたいのか、知識をひけらかしたいのか
よくわからないが(多分そうだろう)、

はっきり言ってその部分はおもしろくない。

その、おもしろくない部分をとっぱらって、
おもしろそうな、本来の「つるおか味ばなし」の部分だけを載せるのだ。

新書版くらいの大きさと厚さで、
カバーも帯もつけず、表紙も1色刷り。160ページくらい。
ちょうど、市販の新書のカバーを取ったような体裁で。
これなら、印刷・製本代もさほどかからないのではないか。

600円くらいで売れないものだろうか。

そして、私の頭をよぎったのは、
この本が売れるようだったら、

今ある売れ残りの「飲んだくれてふる里」と抱き合わせで売れないか、

という悪魔のささやきだった。

1600円の本と600円の本、合わせて2000円。
……いや、1800円でもいいや。
1600円にプラス200円で、
かつて(鶴岡市内だけでだが)ベストセラーだった、
しかも今は絶版になっている本が読めるのである。

どう? どうよ?これ。この思い付き。

かなりいけるのでは、と思った私は、
10月16日、ブログに
「ちょっとした思い付きをメモ」というタイトルで、

「かつて1000部売れた「味ばなし」を新書版で出すのこと。
 600円くらい?
 「あの幻のベストセラー、新書版で再登場!」とか? 要検討 」


などと書き込んだ。能天気に。

すると、それに対するコメントがついた。
以前も何度かコメントしてくれていた人だった。

「版型で値段は決まりませんよ。
 新書・文庫が安いのはランニングコストがいいからです。
 紙代・製本代なんて知れてますよ」


いや、あの、ランニングコストとかは置いておいて、
こんな本、600円くらいなら売れないかなーという
思い付きなんですよ~

という、私の返事に、さらに同じ人のコメントがついた。

「たぶん安い本を作ったら地元取次にも相手されないでしょう。
 だって取次会社が1冊売っても儲けは少ないから。
 ただでさえ、売れない本なのに!」


それまで調子に乗って、ブログに自分の馬鹿な失敗談などを書いていた
私の手は、ここにきて、はたと止まってしまったのだった。


つづく
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