「ジュリーのシングル曲で昭和女性史」を考えてみよう、
という無謀なことをやっております。
どこまで続くかわかりませんが、
途切れ途切れにでもやっていこうかと思います。
カテゴリは【ジュリーシングル曲で昭和女性史】
できれば、最初から順番に読んでいただけると嬉しいです。




さて、ここからがジュリーの本領発揮です。
と言いながら、3曲まとめての記事ですみません。
だってね、
この3曲は、私は密かに「不倫三部作」と
名付けているんですが、
内容はどれもほぼ同じなんですもの。
要するに、
死ぬほど愛しているのに、
あなたは僕の元にはいてくれない
あなたへの愛のためなら死んでもいい
と、こういうことを3曲かけて歌ってるわけです。

もうね、それぞれに
「命かけた愛」
「それで死んでいい」
「愛のため 死んでもいい」
なんてフレーズが入っていて、
前曲の「君をのせて」での、
肩と肩をぶつけながら歩くとか、舟にのせるとかの
ヌルい話じゃありません。
命かけちゃってます。
「死んで(も)いい」なんか
「あなただけでいい」「死んでもいい」
両方に出てきます。
タイトルにもなってます。
激しすぎる。

だいたい「死んでもいい」ほどの「許されない愛」って、
どういうシチュエーションですかね?
平凡な人生送ってる一般人である私には、
不倫ぐらいしか思い付かないんですが、
他になんかあるでしょうか。
ジュリーがゲスト出演した
71年のドラマ「太陽にほえろ!」の
「そして、愛は終った」みたいな近親相姦とか?
あれは叔母さんの不倫でもあったから
ダブルで「許されない愛」ですな。
しかもそのために殺人まで犯しちゃって、
その動機を隠すために死んじゃうってんですから、
確かに命かけてますね。
あとは、女の人がうんと年上とかでしょうか?
あ、「そして、愛は終った」はそれも入ってるか。
完璧だな。
今ではさほど珍しくもないですが、
昔は1〜2歳でも女が年上だと、
「へえ〜」とか言われたもんです。
「年上の女房は金の草鞋を履いてでも探せ」
とか言われたりしてね。(古い)
価値があるものだから
時間をかけてでも探せということらしいですが、
それだけ珍しかったということですよね。
夫婦とかカップルだったら女が年下なのが当然だったんですよ。
なんでですかね?
しかも、うんと年上だと、
別に不倫でも近親相姦でもなくとも、
なんか背徳感みたいな雰囲気も漂ったりして、
女のほうは年上ってだけで、
「いけないわ」とか言っちゃったりしてな。
なんでですかね?
この3曲の中では、はっきりと年上とは言ってませんが、
「あなた」という二人称からして、
相手は年上の雰囲気が漂ってます。
これらの曲を歌っていたときのジュリーは23〜24歳。
23〜4歳と言えば、
当時世間的には結構大人な扱いだったと思いますが、
あの、ふるっふるに美しいかわいいジュリーですからね。
あんなのが「あなた」とか呼びかけるったら、
年上しか想像できません。
それに、このころジュリーは、
のちに奥様となる7歳年上のザ・ピーナッツのエミさんと
お付き合いしてたんですよね。
当然噂にはなってたでしょうから、
そのへんのリアルな背景も加味しての、
この「不倫三部作」だったのかもしれません。
別にジュリーは不倫してたわけじゃないですけどね。

そういえば、
「許されない愛」とB面の「美しい予感」が収録されている
「JULIE Ⅱ」ってアルバムは、
「港」をテーマにして作られたコンセプト・アルバムで、
通して聴くと、
どこからかある港町にやってきた、愛をなくした「僕」が、
そこで船乗りの男に出会い、だんだんと打ち解けて、
町の暮らしにも慣れていきますが、
その男の奥さんと道ならぬ恋に堕ち……
っていうストーリーになってるんですよ。
歌詞カードには、そのお話がポエミーな文章になって、
各曲ごとに載ってます。
(実は私はこのCDは持ってなかったんで、噂に聞いていていたこのポエムがどこに載ってたものなのかずっとわからなかったんです。こないだ、まさにそのアルバムの歌詞カードに載ってるということを知り、慌ててCD買いましたよ買いましたよ)
これがもうね……
「夫人は優しく微笑んだ。
 少年(少年!!?)の胸はさわいだ。
 それはなぜか知らないけれど、
 船を見送った帰り、
 二人でお茶を飲んでいる時も、別れたのちも、
 心のざわめきはとまらなかった……。」
なんちゃってなー。
ああもう、がっつり不倫ストーリーでした。
傷ついた少年に優しくしてくれて、
少年が尊敬するようになった船乗りの
若い奥さんとむにゃむにゃむにゃ……ですよ。
船乗りは船乗りですから、
船に乗ってどっか行っちゃって長期留守という、
おいしい……じゃなかった、好都合な…じゃなかった、
危ないシチュエーションなんですよ。
ありがとうございました。
(しかし、いくらジュリーだからって23歳の男つかまえて「少年」て……。このストーリーは、作詞の山上路夫さんが書いたんでしょうか。ちょっと妄想入りすぎじゃないですかね。ナイス妄想ですけど)

現実でもそうだし、ジュリーには年上の女が似合うんじゃね?

年上の女を愛してる美少年ジュリーっていうコンセプトで行こう。

現実の彼女のことを歌詞にするわけにはいかないから、
一般的にわかりやすい年上キャラの女を歌詞に出そう。

23歳のジュリーより年上つったら、
普通は結婚してる年だよなあ。

じゃあ不倫か! 許されない愛だね!

もうそれでアルバム1枚全部のお話作っちゃおうぜ!

みたいな流れか?

あと、これはちょっと邪推ですが、
ザ・タイガースからの熱狂的な乙女萌えファンたちは、
年上の彼女と噂になってることに、
やはり多少は複雑な思いを抱いていたでしょうから、
「僕」がこんなに命までかけて愛してるのに、
相手の女にはどうしようもない事情があって、
「僕」の想いには応えられない、という、
そんなシチュエーションの曲をジュリーが歌うことで、
(現実はひとまず置いておいて)
少し安心したりもしたんじゃないでしょうか。
「そうよね、あんなに年上の人との恋は実らないわよね」
みたいな。

なんにしろ、
男女が対等な、両思いの恋を爽やかに歌ってた「君をのせて」とは
世界観を180度方向転換させた「許されない愛」は、
オリコン4位までになり、
この曲で紅白歌合戦に初出場もしています。
大ヒットと言っていいですよね。
私もこれは「ジュリーの曲」として記憶しておりました。
リアルタイムで聴いていたかどうかはおぼろげですが、
あの重苦しいイントロを聴けば、
「おお、懐かしい」とすぐにメロディが蘇ります。
特にファンじゃなかった子供の耳にも繰り返し届いて
覚えてしまうくらい、テレビや街で流れていたんでしょう。

現代的な恋愛を歌った「君をのせて」より、
どっちかというと古くさい世界観の「許されない愛」のほうが
売れたのはどうしてでしょうか。

話はちょっと飛びますが、
ザ・タイガースからのジュリーファンの姉様たちって、
ちゃんとしたおうちの、いわゆる「お嬢さま」が、
多かったんじゃないかって気がしてるんですが、
そんなことないすかね?
これは別に統計を取ったわけじゃなく、
私のまわりの2〜3のサンプルから
想像してるだけなんですけどね。
GSは不良の音楽だなんて言われて、
中高生はコンサート禁止令が出されて、
会場の入口にはPTAが見張りに立っていた、
なんてこともあったようですが、
ザ・タイガースに夢中になってた女の子たちがみんな
不良だったなんてことはないと思います。
っていうか、あんなキラキラの王子さまたちを遠くから見て
きゃーきゃー言ってる不良なんていませんよ。
いいとこのお嬢さんたちだったからこその、
PTA出動ってこともあったんじゃないでしょうか。
ほんとの不良はもっとディープなところに行ってたでしょうし、
そういう子たちの親はたぶん、コンサートやジャズ喫茶ぐらい、
ダメもいいもなかったと思います。
女優の夏木マリさんが、最近のラジオでサリーと話していたときに、
「(タイガースみたいな)スターバンドには
 (まわりに)いっぱい人がいてご本人たちと会えないから、
 ちょっと売れないバンドのおっかけになるのが
 醍醐味だったんですよ。
 楽屋で出待ちしてると、ちょっと話せるわけ」
てなことをおっしゃってましたが、
それが過激になるとグルーピーってことですよね。
ほんとの不良はそこまで行ってたんじゃないすかね。
夏木マリさんが「ほんとの不良」かどうかは知りませんが。
(スケバンだったらしいですけど……)

そんな一部のディープな人たちではない大多数のファンは、
親にいやな顔をされながら、
たまには親の目を盗んだりもしながら、
ジャズ喫茶に通い、タイアップキャンペーンのチョコを買いまくり、
タクシー飛ばしておっかけしたりしてたんですよね。
そんなお嬢さんたちも、ジュリーがソロデビューしたころは、
20歳前後になってたんじゃないかと思うんですが、
「許されない愛」が発売された1972年ごろは、
女は20歳過ぎたら嫁に行け
ってなことをまだまだ言われた時代。
ええとこのお嬢さんだったら特にそうで、
すでにお見合いも何度か経験してるぐらいの年齢でしょう。
女はクリスマスケーキ(25過ぎたら価値がない)なんていう
言葉もまだありませんでした。
っていうか、あれが自虐にしろ嘲笑にしろ、
わざわざそう言われていたということは、
25歳過ぎても独身でいる女性が増えて、
なかなか結婚しない(できない)女性もいるということが
世の中に認識された結果ということだと思いますが、
70年代前半はまだ、
25歳過ぎた女が結婚の予定もなく独身でいることはありえないと、
素で思われていた時代でした。
だから、「クリスマスケーキ」なんていう言い方で、
揶揄するようなこともありませんでした。
25歳過ぎても独身でいる娘は、真面目に困った存在だったんです。
おそろしいことです。

なので、当然ザ・タイガースからのジュリーファンのお嬢さんたちも、
20歳ぐらいになった「許されない愛」のころは、
「そろそろお見合いしないと」とか、
少しは現代的な親御さんなら、
「いい人はないの?」とか言われて、
せっつかれているころです。
「いつまでも『ジュリー!』とか言ってないで、
 そろそろ現実を見なさい」とかね。
ああ、現実……。
そこで、親の言うことを聞いてお見合いするでも、
「私は結婚相手は自分で見つけるわ!」と宣言して、
まずは仕事に就くとか大学に行くとか、
どういう道を行くにしろ、
ジュリーのことは一旦置いといて、
現実の自分の人生の駒を進める算段をすることを
迫られた時期じゃないかと思います。
ジュリーがいくら、
「君をのせる舟になろう」と優しく語りかけてくれても、
現実にその舟に乗ることはできない。
「ジュリー、ごめんね」と
心でつぶやいたかどうかはわかりませんが、
自分の舟は自分でなんとかするしかないんです。
「ジュリーのことを忘れたわけじゃないのよ。
 でも、少女のころのようにジュリーと
 ずっと一緒にいるわけにはいかないのよよよ……」

というわけで、「許されない愛」ですよ!
ジュリーは、命かけて、死んでもいいぐらい、
「あなた」のことを愛しているのに、
ジュリーとともに生きることはかなわない……。
現実に親の決めた相手と結婚した方もいたでしょうから、
その感情移入っぷりったら半端なかったことでしょう。
しかもジュリーは、
死んでもいいぐらい愛している「あなた」だけど、
僕では「幸せには出来なかった」と言い、さらに、
「あなた」は「日暮れせまれば やさしい人を待つだろう」と、
「あなた」の結婚生活は幸せなものなんだよねと、
フォローまでしてくれてるんですよ。
親切すぎる。
ファンたちは、少女のころに夢見たような
ジュリーのお相手のマリーやシルヴィにはなれなくて、
他の人と結婚したり、勉強したり仕事をしたりと、
現実的な自分自身の人生を歩んではいるけれど、
ジュリーには「あなただけでいい」と愛され続けている、
という夢を見せてもらえるんです。
他の、ファンではなかった女の子たちにしても、
状況は同じだったわけですから、
夢見る頃を過ぎて、現実ではいろんな妥協も諦めもして、
生活していかなくちゃならないのは同じです。
そんな自分の現実とすこ~しリンクさせつつ、
「許されない愛」からの不倫三部作は、
ちょっと大人な夢を見せてくれる。
これが、当時のジュリーのキャラに
ぴったりだったこととも相まって、
ヒットに繋がったのではないでしょうか。


超長いですが、この記事はまだまだ続きますすみません。


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