【vol.3】からちょっと間が空いてしまいましたが、
【双花町についてあなたが知り得るいくつかのことがら vol.4 [Kindle版]】
本日発売になりました。



【vol.3】までは、花や建物が表紙でしたが、今回は人です。
しかも、見えそうで見えない(笑)、
裸の上に布を被った人物。
この、頭から布を被った絵柄ってのは、
どうしてこう、不穏に見えるんですかね。
いい感じです。


布を被った不穏な画像といえば、
ジュリーのこれが思い出されるジュリー脳。

81NYRF 81-82NYRF-2

1981〜82年のNEW YEAR ROCK FESTIVALで
「ヴァニティファクトリー」を歌ったときのもの。
スカーフで頭をぐるぐる巻きにして
顔を覆ったまま歌うとか……。
これ初めて見たときは度肝を抜かれましたね。
なにこれなにこれ!
不穏で妖しくてかっっこよすぎる!
(リンクは貼りませんがYoutubeで検索してみてください
 キーワードは「NEW YEAR ROCK FESTIVAL 81-82」)
最先端すぎる。

……と、脱線しました。
今回は【双花町について〜】
どんなふうにして作っているかのお話です。

この電子書籍は、
川口晴美さんの詩と芦田みゆきさんの写真で構成された、
ビジュアルブックなわけですが、
これを構成しているのが私・デザイナーの小宮山裕です。
川口さんの詩は、最初からだいたい全体の分量がわかっていたので、
それを6分割して、6巻で刊行しようということは、
最初の段階で3人で相談して決めました。
3分割という案もあったのですが、
Kindle本にしてはちょいと長過ぎるのではということで、
最終的に6分割となりました。
で、その巻ごとに、詩と写真を持ち寄って、
表紙の写真と全体のざっくりとしたイメージを打ち合わせます。
【vol.1】は正直手探りでしたが、
ひとつ完成したら、「あ、こういう感じね」と、
3人の中で共通のイメージができあがり、
【vol.2】からは、打ち合わせもスムーズだったと思います。

ちなみに、【vol.1】から【vol.3】までは
イメージカラーを設定していて、
順に、グリーン、赤、青と変化しています。
で、今回の【vol.4】は無彩色。
6分割の4番目ということで、
ここでちょっと変化をつけようと打ち合わせました。
【vol.3】まではほとんど出てこない人物を
前面に出しているのもそのためです。
中ページのパートごとのタイトルの入り方も変えました。

んで、その打ち合わせのあと、
芦田さんはその巻の川口さんの詩の
内容に合わせた写真をセレクトして、
小宮山のところに送ってきます。
このときに重要なのが、
というより、自分で言うのもなんですが、
おもしろいなあと思うのが、
川口さんはその時点で
最終的にどんな写真がセレクトされたかは知らないし、
芦田さんは詩を元にしてセレクトしているにも関わらず、
小宮山へ「これはこのシーン用」などという
指定をいっさいしないというところです。
30数点の写真がひとつのフォルダに入って、
ドサッとただ送られてくる。
私から「なにか要望はある?」とふたりに聞いても、
「自由にやって」というお返事があるばかりです。

そこから、私の作業が始まるわけですが、
まず詩を読み込み、それぞれのパートのビジュアルイメージを
ぼんやりと自分の中で作っておきます。
それから、芦田さんから送られてきた写真を眺め、
ざっくりと分類します。
んでもって、自分が考えてたパートごとのイメージに
その写真たちを当てはめていく。
もうこの場面にはこれしかないでしょという写真もあれば、
どこの場面にもはまらない写真もあるけど、
とりあえず、全部を場面ごとに、
自分の中で説明をつけながら割り振っていく。
「説明」というのは、
「ここはホテルの室内の場面だから室内の写真」
「外を歩いている場面だからこの道路」
「夜の場面だから暗い写真」
「屋内から外に出ていくストーリーだからこの順番」
「窓という単語が出てくるから窓の写真」
などなど……
全然詩的じゃなく、具体的に、
屁理屈でもこじつけでも、なんかしら説明がつくように、
詩の内容と写真を結び付けていく。
でも、この作業のときはまだ手は動かさない。
写真は画像データなので、
PCの画面上で見ているけど、
レイアウトソフトは起動させず、
テキストはプリントアウトして手元に置き、
画像は一覧表示にして眺める。
これかな? あれかな?と、
脳内で組み合わせ、動かし、
脳内で誰にともなくいろいろと説明しつつ、
脳内で作っていく。
このとき、なるべくあやふやな部分がないようにしたいのだけど、
どうしてもどこにも当てはまらない写真や、
どの写真のイメージとも違う詩の言葉も出てきてしまう。
そういうときは、いくつかの違う説明を考えたり、
写真を入れ替えた案を考えたりする。
この作業がだいたい丸一日が二日間ぐらい。
ずーっと考えてる。考えて考え続ける。
脳内での作業だから、PCの前を離れても考えてる。
「どうしてここにこの写真?」という誰かの質問に
「この人物が思い描いているもの」とか、
「詩の中には書いてないけど、ここは庭を見ているイメージ」とか、
説明、というか言い訳をし続ける。

ここまでの作業は、実は、
普段の仕事でデザインするときの作業と同じだったりします。
仕事ではもうこの段階で実際に手を動かして、
レイアウトソフトに落とし込みつつやることが多いですが、
どのページも小物のデザインもフォントの選定も、
説明が付くように作っていく。
「このアニメは学校が舞台だから黒板風の囲みデザイン」とか、
「このゲームは中世ヨーロッパ風だからこの飾り罫」とか、
そんな程度ですが、それが全体として説明が付くようにする。
別に誰に説明するわけじゃないんですが、
なんとなく説明の付かないデザインは気持ち悪いんですよ。
すっきりと全部に納得のいく説明ができるデザインができたときは、
いいデザインができたなあって感じがする。

でも、そういう「いいデザイン」は、
わかりやすく情報を伝えるための仕事のときの「デザイン」。
というより「レイアウト」。
【双花町】はそれとはちょっと違う。
なんせ、元が「詩」ですからね。
最終的に受け取る読者が、
どれだけイメージを膨らませることができるかということが、
重要なんじゃないかと思う。
そのイメージの膨らみを邪魔するようなデザインではいけない。
膨らむ余地を残しておかないといけない。

なので、【双花町】を作るときは、
上までの「説明を付ける」作業を脳内でやったあとは、
一旦それを忘れます。

できれば、丸一日ぐらい全然別のことをやって過ごす。
今回はゲームやってました。
ええ、刀剣乱舞です(笑)。
で、いい感じに記憶が曖昧になって、
詩の内容とか順番とか、写真の有無とかが、
ぼ〜んやりしてきたところで、
おもむろにレイアウトソフトを起動。
最初のページから順番に割り付けていきます。
文字は、テキストデータの状態で見ているよりも、
レイアウトしてから見たほうが私はイメージが湧くので、
画面上で見つつ、
「ここでページを変えて写真を入れよう」とか
「この1行だけ目立たせよう」とか、
「ここは違うフォントにしよう」とか、
割り付けながらやっていきます。
最初はあくまでも順番に。
バック地や途中に挟み込んだり組み合わせたりする写真も
その都度、まとめて入れてあるフォルダの中から選びます。
「忘れる」と言っても、ほんの1〜2日前のことですから、
写真を見れば「ああ、これこれ」と思い出し、
まあ、だいたいが最初に考えた組み合わせで入れていくのだけど、
途中で、「あ、こっちがいい!」と思ったら、
その直感のほうを優先して入れ込みます。
そのときは説明は付けません。
というか、この実際のレイアウト作業のときは、
脳内の説明役はもういません。

説明が付かなくても、いいと思ったらやる。

なんというか、最初にギチギチに説明を付けて、
他に選択の余地なく脳内に作り上げていたものを
ゆるめてやる感じ。
そのゆるめ加減がなんとも説明できない。
なので、ゆるめたあとは説明は付けずにやる。
むしろ、説明できないけどこれがいい!
っていうぐらいのところでやっていく。

で、たぶんこれは、
芦田さんの写真のセレクトがいいからだと思うんですが、
あんまり配分を考えなくとも、
最初から入れたいところに写真を配置していくだけで、
最後までぴったりと全部が収まるんですよ。
余りが出ない。
これは【vol.1】から【vol.4】まで、どれも同じ。
不思議だけど、とても気持ちいい。
ま、最後に全体のバランスを見て微調整はしますが、
このあんまり考えなくともピタピタと全部が収まる
デザインができたときっていうのは、
いいデザインになっていることが多い。
受け取った人が説明をされなくとも、
自分の中で好きなイメージを膨らませ、
自分なりの説明を付けられるデザイン。

最初に紹介したジュリーの顔を隠して歌うパフォーマンスですが、
あれも、ジュリー側からの説明はなにもありません。
おそらくステージ上でジュリーが思いつき、
とっさにやったことなんじゃないでしょうか。
ジュリーにも説明はできないんじゃないかと思います。
他のアーティストのパフォーマンスを参考にしたのかもしれないし、
なにかで見た映像を思い出したのかもしれない。
当時、すでに超の付くビッグスターだったジュリーが、
ロックフェスティバルというステージに立つにあたって、
「ジュリー」ではなく、他の多くのバンドと同じように、
顔ではなく歌を、演奏だけを聴いてくれという意図なのか、とか、
さまざまに後付けの説明はしようと思えばできる。
でも、説明がなくともあのパフォーマンスは、
ダントツにかっこいい。
見た途端「かっこいい!!」以外のなにものでもない。
あそこにはあれしかないと思える。
そして、見ている者それぞれが、
さまざまにイメージを膨らますことができる。
素晴らしいです。

最後はまたしてもジュリーにこじつけましたが、
【双花町】のシリーズは、
そんなふうなデザインにできているのではないかと、
ちょっと自負しているのです。

よろしくです。






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