Facebookのノートに投稿したのだけど、
シェアやらリンクやら、Facebookのやりかたがよくわからんので、
こっちにも同じものをアップします。




【双花町についてあなたが知り得るいくつかのことがら vol.6】が発売になり、
この長いタイトルの長い詩と膨大な枚数の写真のコラボKindle本が、
ようやく完結しました。
vol.1の発売が去年の8月末でしたから、ちょうど1年。
開始当初から、6巻構成で2ヶ月に1回の発売にして
1年間かけてやろう、という計画でしたので、計画どおりです。
途中、諸事情からvol.3のあとが数ヶ月空いてしまい、
1年では終わらないのではとも思ったのですが、
vol.4、vol.5、vol.6と怒涛の刊行で、当初の予定どおりに収まりました。
真面目なわたしたち(笑)。

この、コラボレーションという形で関わらせていただいた
【双花町についてあなたが知り得るいくつかのことがら】で
私がやったデザイン作業では、
今までにない経験もさせてもらい、いろいろとおもしろかったので、
なにがおもしろかったかをだらだらと書いてみたいと思います。
長いです。

このKindle本は、川口晴美さんの長編詩と芦田みゆきさんの写真を
私=小宮山裕が組み合わせデザインして作る…という、
詩と写真とデザインのコラボレーションですが、
「こういうのを三人でやらない?」と、
芦田さんからお誘いをいただいた当初は、
私は自分の「デザイン」という役割を
そんなに重要なものだとは思っていませんでした。
なんといっても、
ふたりの詩と写真がなければ成り立たない作品なわけですし、
私はそのふたつをふたりの要望を反映させつつ、
できるだけ効果的にかっこよく配置していけばいいんだよね、
ぐらいの気持ちでした。
まあ、言ってみれば、
通常のビジュアル重視のムック本の仕事と同じかなー、
と気軽に引き受けたのです。

しかし、始めてみて早い段階で
「ちょっとこれは、いつものようにはいかないみたいだ」
と気付くことになりました。

なんせ、川口さんの詩は
「詩」ってだけでもよくわからない(すまん)のに、
加えてミステリー仕立て。
しかも、私は始めた当初は全文を読んでなくて
(というか完成してなかった)
vol.1からvol.3まではその都度、
掲載分だけをもらうというやり方でしたので、
冒頭で少女が殺された事件はどう解決するのか、
というかそもそも解決なんてするのか、
「あなた」はその事件にどう関わっているのか、
こっちの「わたし」とあっちの「あたし」は同一人物なのか別人なのか、
こっちのシーンとそっちのシーンの時系列は同じなのか違うのか……、
なんにもわかりません。
その巻ごとシーンごとに、まさに詩を読むように、
そこにある言葉だけからイメージを受け取り想像し、
自分だけの「双花町」を作り上げていくしかない状態でした。

さらに、そこに絡める芦田さんの写真は、
想像の余地がものすごくたくさんあるタイプの作品たちです。
揺れていたり滲んでいたり、
「これはなにを写したものなんだろう?」というものもあります。
写っているものはなんだかわからないけど美しい、とか、
不穏な感じがする、とか、イメージだけが見える、みたいな。
なので、写真のほうも、なにが写っているかとか、
どういうシチュエーションで写したものか、みたいなことはあまり考えず、
まるで「詩」を読むように、
そこに「見える」ものだけから私が受ける印象で勝手に解釈し、
川口さんの詩と組み合わせていくしかありません。

というか、私が最初に考えていたのは、
川口さんと芦田さんはどちらも自分の作品を
「こう見せてくれ」「ここにはこういうビジュアルで」
というふうにこだわってくるだろうから、
その調整をして、いい落とし所を見付けるのが
私の仕事だろうということだったのです。

そ、れ、が!

ふたりとも自由すぎというかなんというか……。
川口さんはワードに打ち込んだ素のテキストデータ、
芦田さんはファイル名もデジカメで撮ったなりの画像を
フォルダにどさっと詰め込んだものを送ってくるだけ。
私が「なにか要望は?」と聞いても、
「小宮山さんの自由にやって」と言うばかりでした。

はっきり言って、丸投げ!(笑)

川口さんに至っては、詩では重要なものなんじゃないかと思われる
改行も改ページも「好きにしてー」と言う始末。

いいんですかい!?

というわけで、
私は勝手に「ここだ!」という箇所を抜き出して大文字にしたり、
1行だけ別ページにしたり書体を変えたり、
写真を分割して載せたり、文字のバックに敷いたり、
半調にしたりぼかしたり色を乗せたりと、
本当にやりたい放題をさせていただきました。

とは言っても、今読み返してみると、
vol.1のときはさすがに様子を見ながらやっていて、
詩と写真の関係も(たぶん)普通にわかる範囲で組み合わせてありますし、
なんとなくおとなしい感じがします。
それが、「え? ここまでやっていいの?」「これもあり?」と、
vol.2、3と続くに連れてだんだんと大胆になっていきました。
私が勝手にあれこれやることをふたりが快くおもしろがってくれたことも、
とても嬉しく、もっといろいろやってやろうという気持ちにもなれました。

そんなふうにしてvol.4までを作ってみて、
その作業工程を考えてみたときに、
いつもの仕事でやっているデザイン作業とは違う思考回路がおもしろいなあと思い、
それについてはブログにこんな長文【双花町の作り方】を書きました。
きりきりと考えて考えて、考えたあとに一旦忘れて頭の中を緩め、
その緩んだ状態で組み立てていく。
自分で文章にしてみて、
改めて「ああ、そうだったんだ」と認識できたような気がします。

その自分発見的なことは非常におもしろかったのですが、
実はこれを書いたことによって、このあとに問題が発生してしまいました。

vol.4からvol.5の発売の間隔は1カ月しかなく、
ということは、vol.4を完成させてKindle用のデータを芦田さんに送り、
ひと息ついてあれこれ考えたことを上記の【双花町の作り方】に書いた……
と思ったらもうすぐにvol.5の作業に取り掛からねば、
って感じだったんですよ。
平行して7月5日のポエケットで販売した【紙版2】の制作もやってたし。
そういう状況でvol.5を作ろうとしたときに、
どういうことが起こったかというと…… 

私は【双花町〜】をどうやって作っていたのか
わかんなくなっちゃったんです!

「わかんなくなっちゃった」というのとはちょっと違うかもしれないけど、
以前のようには作れなくなってしまったんですよ。
あとから考えると、
それまでの【双花町〜】の作り方を言葉にして文章にしてしまったことで、
「最初は脳内で説明をつけつつ考える」
「そのあとは考えたことを緩めて直感でレイアウトしていく」
以外のことができなくなってしまったんです。
言霊ってオソロシイですね。

さらに平行して作っていた【紙版2】は、
私のデザインに対する考え方を
目に見える、手で触れる形にできたということで、
とても刺激的な作品にできたと思うし、
私のひとつの到達点でもあったなあと思うのですが、
その具体的な「モノ」としての【双花町〜】を作る工程にも
縛られてしまったのかもしれません。

そのときのことをのちに川口さんに話したところ、
「ムカデがどの足から動かすとか考えると歩けなくなるみたいな?」
と言われたんですが、まさにそんな感じ。
考えても考えても、以前のようには深く入っていけない。
「緩める」ってどうやるんだっけ?……

思うに、【双花町の作り方】では
「最初は脳内で説明をつけつつ考える」
「そのあとは考えたことを緩めて直感でレイアウトしていく」と、
その工程を言葉で規定してしまったのですが、
おそらく私は「説明をつけつつ考える」「緩める」以外のことも
無意識でやっていたんですね。
言葉では説明のできない、
もっとうすぼんやりとした「衝動」とか「イメージ」のようなものが関わっている。
それは私のこれまでの50年間の人生経験(大したことはないけど)だったり、
それなりの積み重ねからくる自分でもよくわからないイメージの連鎖だったり、
たぶんそういうことのほうが、
自分で言葉やモノで規定した作業工程よりも重要な要素だったんじゃないでしょうか。
でもそれは言葉にするのは難しいので、文章を書くときには削ぎ落としてしまう。
そして、そうしたことによって、
削ぎ落とされた言葉にならないことはなかったことになってしまい、
実際にできなくなってしまう。
ま、私の不徳の致すところが大半なんですが、
つくづく自分は言葉とは違うところで
デザインということをやっているんだなあとわかったことでもありました。
それがわかってなかったから、言葉に振り回されて、
それまでできていたことができなくなったりしたわけですけどね。

ま、今だからそんなふうに、また言葉にして言えるんですが、
vol.5作成中はどうして以前のようにはできなくなっちゃったのかわからなくて、
私はウンウン唸ることになりました。
それでもどうにかこうにか形にし、なんだか納得はいかなかったのだけど、
とりあえず川口さんと芦田さんに見てもらおうと、チェックに出しました。
そしたら、芦田さんからは
「表紙の狂った感じが全体にほしい。
 リアリティよりも、どこか外れていってしまった感じ(がほしい)」
川口さんからは
「ちょっと全体的に弱いというか、インパクトが足りないのかも」
というお返事が。
ああ、やっぱり……と思うと同時に、
芦田さんの「狂った感じが全体にほしい」というお言葉に、はっとさせられました。
まさにその「狂った感じ」というのが、
上で書いた、言葉にならない「衝動」や「イメージ」だったんですね。
これまではその「狂った感じ」があったから、
強くインパクトのあるデザインができていた、
言葉で考えているだけじゃダメだったんだ、とわかった瞬間でした。

そういう作業工程でのやりとりで目が開かれる経験をしたことも含めて
コラボレーションだと思うので、
【双花町〜】に参加させてもらえてそういう経験ができたことは、
本当によかったと思います。ありがとうありがとう。

芦田さんからは「私のセレクトが単調だったような気がする」とも言っていただけて、
vol.6用にと準備していた写真も何点かvol.5に使っていいよーと出してもらい、
私も心を入れ替えて(?)なるべく言葉に囚われないようにと気をつけつつ作り直し、
そうしてvol.5はどうにか完成したというわけです。
ちゃんと「狂った感じ」になっているでしょうか…。

この工程は苦しかったけど、
デザインについていろいろなことに気付けたという意味では
とてもおもしろく有意義な経験でした。
私は「デザイン」という仕事は、クライアントや編集さんに、
どうしてこういう形なのか色なのか組み合わせなのか、
「説明」ができないとダメだとずっと思っていて、
それは基本的には今でも変わらないのだけど、
「説明」以外のものも重要なんだと今回のことでわかりました。
「説明」だけで作られたデザインは、人にアピールする力が弱い。
その「説明」を理解し納得できた人にはウケるけれど、
納得できない人には受け入れられない。
でも、「説明」以外の言葉にならない要素がうまくデザインにハマり込んでいると、
その言葉にならない部分を人々はそれぞれ勝手に解釈し
自分の好きなように受け取ることができる。
そういうことで多くの人にアピールし、
それを見た人はそれぞれが「自分で」説明を付けようと考え始める。
その上でデザイナーの説明を聞くと、
「そういう意図があったのか」と納得しつつ、
自分はそれにこういう意味も見ることができたと、
そこからさらに広げた解釈ができる。
いわば、デザイナーと見る人とのコラボレーション。
見られることによってデザインが完成するみたいな、
そういうのが「いいデザイン」なんじゃないでしょうか。

齢53、デザイナー歴30年にして遅すぎる気もしますが、
まあ、気付けただけでもよかったかなと思います。

んで、そんな難産なvol.5を経ての完結編vol.6は、
もう「説明」だの「考える」だの「緩める」だの、
そんな言葉で決め込んだ工程は無視して、
衝動の赴くまま、作りたいように作りました。
「無視」と言っても、シリーズものですから、完全に無視するわけにもいかず、
それなりに考え方のようなものはvol.1〜5のやり方を踏襲しつつだったのですが、
【双花町の作り方】で書いたような工程はあまり意識せず、
考えたいときに考え、手を動かしたいと思ったら動かし、
脳内を緩めたいときは緩め、緩めないで考えるときもあり…という感じで、
作りながらその工程もやり直している感じ。
完結編ということで、デザイン作業自体も
vol.1〜5の総集編のようなものだったのかもしれません。

そもそもvol.6は、それまでの謎が一気に解かれていく解決編という、
それまでとはちょっと違った趣きもあり、
vol.5までと同じように作るのが難しいなあというのは
作り始める前から思っていたことでした。
しかも、解決編とはいえ、やっぱり「詩」なので、
果たしてこれは「解決」と言えるのかどうか、
この人物とその人物の関係性は本当はなんだったのか、
あのシーンとこのシーンの繋がりは?……
読んでいると「なるほど、そうだったのか!」と思うのですが、
読み終わってしばらくすると
「あれ? どうだったっけ?」と不安になる……そんな「詩」です。
そういう意味でも、vol.6ではそれまでの作り方とは違うやり方で、
一層、謎は謎のまま「狂ったような感じ」だけを意識して作ったような気もします。

vol.6には、1〜5に使った写真をサブリミナル的に使おうということは、
最初からなんとなく考えてはいたんですが、
最後の方「b’」パートの怒涛の3ページはやっていて思いついたもの。
しかも思いついたときには文字は入れないつもりだったのだけど、
やってみたら、「夢は繰り返し囁くだろう…」からの三連が
ぴったりそれぞれのページにハマって、これはなんとも気持ちいいページになりました。
この、vol.1から5までの写真が溢れて、
まさに【双花町〜】の物語を繰り返し囁かれながら駆け抜けているようなイメージから、
最後の「a’」の白いストンと落ちていく感じまでが見事にハマり、
そしてその白いラストから続く奥付ページの、
黒い枠の向こうにホテルのロビーとその向こうの窓の外が見え、
しかも傾いている写真がとどめを刺して、
完結編にふさわしいかっこいいデザインになったなあと思います。

現物を見てもらえると嬉しいです。

【双花町についてあなたが知り得るいくつかのことがら vol.6】

と、長々と書きましたが、そんなふうにして私がデザインした
【双花町についてあなたが知り得るいくつかのことがら】はvol.6で完結しました。
川口さん、芦田さんとのコラボもこれで一旦終わったわけですが、
芦田さんはこの【双花町〜】を元にした写真展“Border”を来週から開催します。

Facebookページ

この写真展は、
「双花町を出た私が、1度ゆっくりと目をつむり、
 再び見開き、その先に見えてきた光景です。」とのことで、
私もそんなふうにその先の光景を見ていけたらいいなあと思うのです。

写真展には私も8日から11日までの昼間は店番として行っていようと思っています。
上でもちょっと書いた
【双花町についてあなたが知り得るいくつかのことがら paper version 2】も
会場で販売します。

お時間ある方はぜひお立ち寄りください。
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